マルチカラーフローサイトメトリーとは、1つのサンプルに対し、複数の蛍光パラメーターを用いて分析することを言います。細胞表面マーカーや細胞内マーカー、DNAあるいは、それらすべてを組み合わせる場合もあります。 意味のある結果を得るためには、適切なコントロール(第4章参照)を設定し、実験手順の最適化(第5章参照)し、慎重にサンプル準備をすることに加え、考慮すべき事項があります。 パネルに追加した蛍光色素が別の蛍光色素に影響する可能性があるためです。 その結果、追加のチャンネルによる余分な蛍光を補正(コンペンセーション, 第2章参照)することが必要となり、また、分解能が低下します。 非特異的な染色や高いバックグラウンド染色、細胞の自家蛍光や漏れ込みによる高レベルのノイズは、感度および分解能の低下を引き起こします。
分解能とは、機器の性能であるとともに、陽性集団と陰性集団とを区別するための蛍光色素の組み合わせのこととも言えます。最適な分解能を得るためには、すべてのパネルデザインの基本を形成するのに役立つ簡単なルールがいくつかあります。必ずしも完璧なパネルが構築できない場合もありますが、これらのベストプラクティスルールに従うことで、不適切な組み合わせの蛍光色素を選んでしまうという誤りを減らし、確実なサンプルが得られます。
パネルの構築を始めるには、まず機器のシステム構成(Configuration)を理解することが重要です。 理論的に最適であるかどうかに関わらず、装置が測定できない蛍光色素は使用できません。 装置の構成とは、フローサイトメーターに搭載されているレーザー、光学系およびフィルターの構成です。 これはサイトメーターによって大きく異なる可能性があります。 例えば、バイオ・ラッドのS3e™ Cell Sorterは最大で2本のレーザーと4つの蛍光検出器を搭載できますが、ZE5™ Cell Analyzerは最大5本のレーザーと、27個の蛍光検出器を搭載する拡張性があります。